仏教の教えではお墓参りをするときに「五供(ごく)」を準備し、きちんとお供えをしてから合掌するのが正しいお参りの作法としています。しかし仏教にはさまざまな宗派があるため、すべてが同じとは言い切れません。ですが「五供」に関してはどの宗派においてもほぼ共通していると考えて良いでしょう。
■お墓参りには作法があり、五供とは読んで字のごとく「五つの供え物」のことです。
【お花】【線香】【浄水】【お供え物】【数珠】です。
線香は香りによってお墓参りをする人の心と体を清め、亡くなった人の霊を弔って飾る花も心を清らかにするために飾るものとされています。
そして暗闇に潜む煩悩を光によって照らし出すために灯すのが灯燭(とうしょく)と呼ばれるもので、お墓には火を灯さなくても明るく照らし出しているのと同じ役目を果たす石灯篭が設置されています。
そのため、石灯篭があれば灯りはなくても良いのですが、できれば燭台を用意して蝋燭(ろうそく)を灯すのが良いでしょう。
墓石の中央、家名のすぐ下にあるへこんだ部分は、浄水と呼ばれる清く澄んだお水を注ぐ場所です。
清らかな水をお供えするのはご先祖様に対してだけでなく、実はお墓参りをする人の心を清めるために必要とされているものです。
最後にお供えするのが飲食(おんじき)で、これは普段俗世に生きている人々が日常口にしている食べ物を指します。
多くの場合、故人が好きだった食べ物をお供えしたり、季節の果物、ジュース、お茶などをお供えします。
お供え物は、仏様は、香を楽しむとされています。
かつてはお墓にお供えした飲食(おんじき)はそのままにしていたものですが、近年はカラスなどの被害に遭うためどこのお墓でも持ち帰るように促しています。
そのためお墓参りを終えてお下がりした「おんじき」は、故人や先祖を偲んで、頂くのが正式な作法です。
■お墓に手を合わせる時は、墓石に対して『上から目線』にならないように、
必ずしゃがむ等して、見上げるように数珠を持って手を合わせます。
■お墓参りについての疑問
お墓参りは行く時期が決まっているわけではなく、いつお墓参りに行ってもかまいません。
一般的には春と秋のお彼岸やお盆、お正月に祥月命日、月命日などにお墓参りをすることが多いでしょう。
遠方にいるためになかなかお墓参りができないという場合、帰省したときにお墓参りをするという人も多いものです。
また結婚や出産などの人生の中で大きな出来事が起きたときは、先祖に報告をするためにお墓参りをすることもよくあります。
お墓参りは喪服や黒い服を着たほうが良い回忌法要以外は、普段外出するときと同じ服装で行ってかまいません。
持参するものは前述した「五供」のほかに、お念珠を忘れずに持っていきましょう。
またお墓をきれいにするための掃除道具も持参し、汚れを落として雑草などをきれいに抜くこともお墓参りでする大切なことです。
■墓じまいをするには
近年遠方のためお墓の管理ができないケースやお墓を守っていく人が途絶える可能性があるため、墓じまいを希望する人が増えています。
お墓参りをする人がいなくなったお墓は無縁仏となり、お墓が荒れていくのは珍しいことではありません。
墓じまいをするためには菩提寺で閉眼(へいがん)供養をしてもらって、お墓に眠っている先祖の霊を抜いていただく供養が必要です。
閉眼供養では僧侶が読経をしてお墓に納めた遺骨を取り出し、墓石に宿った魂を抜いて、ただの石の状態にしてから石材店に引き取ってもらうという流れになります。
取り出した遺骨と先祖の霊は、菩提寺の永代供養塔において永代供養という形で供養されます。
墓じまいをする場合はまず菩提寺に相談し、菩提寺がない場合は遺品整理を手掛けている業者などに依頼するのもおすすめです。