「アンコンシャス・バイアス」の事例
考える前に、瞬間的かつ無意識に生じる思考プロセスの一つで、コントロールすることが難しいとされている。
「アンコンシャス・バイアス」は、いくつかのタイプに分けられる。
代表例が、以下のようなものだ。
●正常性バイアス
●集団同調性バイアス
●ステレオタイプバイアス
性別、年齢、国籍、職業といった属性に対する先入観や固定概念を指す。
●確証バイアス
自分の意見や信念、価値観、仮説などの正しさを証明する情報のみ集め、反証となるデータや反対意見は無視・排除する姿勢のことである。
●ハロー効果
ある人物・事象を評価する際、目立つポイントだけを注視して偏った判断をしてしまう姿勢である。
近年、政治家・著名人の失言をきっかけとして性差別や偏見が注目されるケースが増えている。
●職場における「アンコンシャス・バイアス」
「若手は雑用からが基本」、「今どきの若者には根性がない」、「ゆとり世代はプライドが高い」、「昭和生まれの社員は考えが古くて融通が利かない」、「年配の社員はパソコンを使いこなせない」など、年齢や世代に対する思い込みも根強い。
また、「障がい者に難しい仕事は任せられない」、「大企業からの転職者なのでキッチリとした仕事ができるはず」、「LGBTQ+の人たちは何を考えているかわからない」、「彼は血液型がA型なので神経質だ」など、相手の属性から能力や特性を決めつけてしまうこともある。
「自分の意見や立場を守ろうとして相手の話を遮ったり無視したりする」、「普通、こうするでしょう、と自身の価値観を押しつける」など、一方的な態度で周囲と接する者も存在する。
●人事評価における「アンコンシャス・バイアス」
偏見に基づいて相手を判断・評価する人も存在する。「残業や休日出勤の多い者を“仕事に熱心”と評価する」、
●採用における「アンコンシャス・バイアス」
「体育会系なので根は真面目」、「女性は営業職や管理職に向かない」、「介護や育児と仕事の両立は難しい」、
「アンコンシャス・バイアス」が企業や従業員にもたらす悪影響とは
●個人やチームに対する影響
マネージャーが「アンコンシャス・バイアス」を持って部下に接すると、社員のストレス増大とモチベーション低下、上司・部下間の関係悪化などが生じる。
また意思決定の際に、管理職が「多数派こそ正しい」と思い込んで少数派を無視したり、逆に自分の考えに固執して周囲の意見を軽視したりすることで、チームとしてのモチベーションも下がることになる。
●組織に対する影響
部門のリーダーや経営層の意思決定が「アンコンシャス・バイアス」によって左右されることの影響は、さらに深刻だ。企業全体としてモチベーションが下がり、生産性も低下するだろう。
採用や評価といった人事領域が「アンコンシャス・バイアス」に支配されると、優秀な人材を獲得できないばかりか、「採用されるのは同じようなタイプの人材ばかり」、「昇進するのも同じタイプ」といった弊害が起きる。
「アンコンシャス・バイアス」を放置することで、偏見や差別が組織風土として定着してしまい、企業イメージの悪化を招くだろう。最悪の場合はハラスメント訴訟にまで発展し、ブラック企業とのレッテルを貼られてしまう可能性も大だ。
●ビジネスチャンスの損失
斬新なアイディアが生まれる背景には、企業内における価値観の多様性がある。イノベーションやビジネスのグローバル化を進めるうえで、多様な人材は何より大切だ。「アンコンシャス・バイアス」によって人材タイプが同一化すると、企業として拡大・成長することは困難となるだろう。
またビジネスパートナーを選択する際に、「社長が20代というのは問題だ」、「歴史のある企業だから心配ない」といった偏見、排他的な考え方、思い込みを持っていると、貴重なビジネスチャンスを失う可能性もある。
企業や従業員ができる「アンコンシャス・バイアス」をなくすための対策とは
●個人およびチームとしての取り組み
「自分は公平・平等に周囲を見ている」と思っている人は多いだろうが、そういう人でも無意識に偏見を抱いているからこそ「アンコンシャス・バイアス」という概念が注目されているといえる。
そのうえで、「自身が抱いている偏見と向き合う」、「これまで社会や社内で常識とされてきたことを無条件に受け入れるのではなく疑問を抱く」、「自分の周囲にも偏見を抱いている人がいると認識する」、「言動を改善する」など、少しずつ「アンコンシャス・バイアス」の払拭に努めたい。
また「アンコンシャス・バイアス」は、表面的な理解だけでは不十分な成果しか出せず、一個人が職場全体の悪しき慣習を改善することも難しい。
誰もがアンコンシャスバイアスを持っている
アンコンシャスバイアスは特定の人だけが持つものではなく、誰もが持っているといえます。日常生活の多様な場面で本人も気付かないうちに生み出されるため、無意識のうちに人間関係にストレスを生み出し、円滑な集団生活の妨げになる場合もあるのです。
さらに組織内の推進力を阻むというネガティブな影響にもつながります。
アンコンシャスバイアスを生み出すもの
●エゴ
「些細なことでもそれによって自分を否定されてしまうのではないか」という気持ちになり、自己を防衛するため偏見や思い込みをもって行動してしまうこと。
自己を正当化したいという気持ちや自己防衛心の表れだといえます。
●習慣や慣習
時代遅れになったり変化に対応できなくなったりしているにもかかわらず、気付かずに変化させず「これまで」に固執してしまうこと。
習慣や慣習に縛られると、組織内部のストレスや違和感を増大させます。
結果、周りの人や現状を客観的に捉えられず、人を攻撃するような行動を取る場合もあるのです。