「心筋梗塞」「脳梗塞」に代表される「血栓症」は血管が収縮しがちな冬のイメージが強いですが、汗をたくさんかき、体から水分が抜ける夏も用心が必要です。「血栓症」とは血液中にできた血栓が血管を詰まらせることにより引き起こされる病気です。では何に気をつけたらいいのか?
『血栓』が心臓にできると心筋梗塞、脳なら脳梗塞、肺にできると肺塞栓、
下肢にできると下肢静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
などと呼ばれます」
夏に「倦怠感」「めまい」「頭痛」「ふらつき」「しびれ」を感じると
熱中症を疑う人も多いですが、実は「血栓症」だったということも少なくないようです。
脳梗塞患者の最近の発生件数は3~5月(961件)、6~8月(1004件)、9~11月(917件)、12~2月(966件)と6~8月の方が一番多かったそうです。
脳梗塞の患者の死亡率を調べた結果は、平均気温が32度を超えると27~29度のときに比べ脳梗塞による死亡率が1・66倍に増えているようです。
では、血栓はどうやって作られるのか?
正常な血管では、血管内では血液が固まりません。ケガをして血管から血液が出て初めて固まります。ところが血栓ができやすい血管は主に3つの問題点があるといわれています。
血管壁の状態が悪い、血液の流れが悪い(うっ滞)、血液の成分が変わることです
健康で若々しい血管はゴムのようにしなやかでその内側もすべすべしている。
ところが、血管が老化すると、硬くもろくなり、内側がベタベタしてきます。
老化した血管では血液中の悪玉コレステロール等が血管壁にとりつき、その中に侵入しようとするため、それを排除しようと白血球の仲間が集まってきます。
白血球の仲間は悪玉コレステロール等を食べた後に死んでしまいます。
その死骸と残ったコレステロールがプラークとなり、それが何らかの刺激で破れると、その傷を修復するため血小板が集まってきてかさぶたを作ります。
これが血栓です。
ちなみに健康な血管は、出血が収まると傷口周辺の内皮細胞が増殖して血管壁は修復されます。その後は血液中のプラスミンという物質などの働きで血栓は溶かされ跡形もなくなってしまいます。
ところが動脈硬化や老化が進んだ血管はこのシステムがうまくいきません。
血液がよどむことで、血栓ができることもあります。その代表が心房細動です。
この病気は脳梗塞(脳塞栓)を引き起こしやすいことが知られていますが、それは心臓が震えるだけで血液を外に出せないからです。血液同士がぶつかり血栓ができるのです。
若い人でもコレステロールや中性脂肪の高い人は血液の流れが悪くなります。
ちなみに血流のよどみによって起きる血栓症は動脈より静脈に多いようです。
飛行機内などで同じ姿勢で座っていると発症する下肢静脈血栓症(エコノミー症候群)は血液が心臓から吐き出される動脈よりも、心臓に戻る静脈の方が血流がゆっくりしているからなのです。
血液成分のほとんどは水分。
夏に大量の汗をかいた後に、利尿作用のあるビールや度数の高いお酒ばかり飲んでいると血液が固まりやすい成分に変わってしまいます。
水分が抜けた分だけ血小板をはじめとした血液凝固成分の濃度も濃くなるからです。
夏場にダイエットする人も注意が必要です。
人間は1日に1~2リットル程度の飲み水が理想といわれますが、それ以外にも食べ物から取っています。ダイエットで食べない人はその分、水分を余分き摂取しなければならないです。
なお、人間の血液凝固能力には日内変動があります、それはいつなのかと言うと、
寝ていて長時間体を動かさない早朝が一番血液が固まりやすいようです。
また、砂糖や肉を過食したり、ストレスを感じたり、興奮したり、激しい運動をしたあとも血栓ができやすいそうです。薬もピルやステロイドを使っている人は注意が必要です。
むろん、
血管に圧力がかかり続ける高血圧、食事前後で血糖値が大きく変動する糖尿病、血液中に抗リン脂質抗体が増える膠原病などのほか、歯周病や風邪にかかっている人も血栓ができやすいのです。
詳しくは内科、循環器科の医師等に相談して下さい。