デブネコ

イエネコの祖先は砂漠地帯出身で、猫の身体は体力を消耗しにくい省エネ設計。機敏で活発、運動能力が高い猫でも、年とともにのんびりを楽しみ、動かなくて済むのだったらあんまり動きたくない、という生活習慣を好む猫が増えます。特に秋口になると猫の身体は本能的に冬の寒さに備えて脂肪を蓄積し始めます。

しかし、家猫は、厳しい自然の中で体力を使うことがないので、身体に付いた脂肪は落ちることなく太る原因となります。

極度の肥満は短命にもつながるので要注意

自分でエサを捕る必要もなく、家の中でのんびりと暮らしているところに、猫が欲しがるからといって1日に何度も高級なキャットフードやおやつを与えていたら、猫はあっという間に太り出します。

猫は元々太りやすい動物なので、猫に健康で長生きしてもらいたかったら猫の飼い主は、それぞれの猫に見合った適正カロリーの食事と、適度な運動で猫が太りすぎないように管理してあげなければなりません。

太ったネコ

「肥満の基準」は?

猫の適正体重は、それぞれの個体の体型・骨量によってかなりの違いがありますが、猫が肥満かどうかの判断基準猫の適正体重とは、成熟してから1歳前後の不妊・去勢手術前の体重のことです。

適正体重を15%以上超えると身体に悪影響が出始めるので肥満と判断されます。

四つ足で立っている猫を真上から見たとき、猫の肩よりお腹の方が出っ張っていて身体がヒョウタンのように見えたり、背骨を触った時に背骨の上に脂肪を感じたり、あばら骨が脂肪の下でどこにあるかわからないようでしたら、すぐにダイエットが必要な肥満体型です。

成熟したオス猫には、ジョウルと呼ばれる頬から顎にかけての筋肉が発達し、顔が丸々として、太ももの内側の皮膚がタルタルとしてよく伸びても、これは肥満ではありません。

首や太もものたるみは、ケンカなどで噛まれても致命傷にならない=大きな血管を守るために自然に備わった防護服のような役割をします。

このような皮膚のたるみの場合は肥満ではありません。

しかし、見た目・触っただけではわからない隠れ肥満(内臓脂肪が付いている)の猫もいます。

肥満が身体的に影響を及ぼして問題になるのは、成長期以降の中年にかけてなので、3~5歳頃に一度動物病院でレントゲンやエコー検査で診察してもらうとよいでしょう。

 

猫の肥満の一番の原因は、

必要カロリー以上に食べてしまうことや運動不足です。

それ以外にも遺伝的に太りやすい体質だったり、ストレスによる過食など様々な原因があります。

性本能に突き動かされている時の猫は、食事量が減りたくさんのエネルギーを消費しています。

しかし、不妊・去勢手術が済んだ猫は、「性欲」から開放され、その分、「食欲」が生活の中心となり、どうしても食べ過ぎになりやすく、肥満につながるわけです。

また、猫の場合は数が少ないですが、病気が原因で肥満になることもあります。

猫の肥満によるリスクは、心臓や血管への負担が増えます。

また、皮下脂肪が増えると、皮膚への栄養血管にも負担がかかることで皮膚病になりやすくなったり、キズが治りにくくなり、体重が増えることで関節への負担が増加。

ますます猫は動くことを億劫がって肥満に拍車がかかります。

さらに、肥満になるとインシュリンというホルモンへの反応性が低下して糖尿病傾向が高まり、その他、便秘になりやすくなったり、腫瘍ができやすくなったりするといわれています

猫のダイエットの方法

太りすぎだと診断された猫のダイエットは慎重に計画する必要があります。

まずは、獣医師に血液検査など診察してもらい、他に潜在的な病気がないことを確認しましょう。

また、その猫の理想体重から必要摂取カロリーを割り出してもらいます。

急激なダイエットは非常に危険ですので、理想体重になるまでは獣医師の管理を受けながら、かなり長期戦になることを覚悟してください。

● 食事によるダイエット

食事量を減らすのではなく低脂肪・高繊維質で、なおかつ他の栄養素のバランスの良い食事を選択します。




プレミアムフードを発売している各フード会社から、減量用の療法食が発売されています。

これらのフードは一般的なフードに比べると割高ですが、獣医師の管理のもとダイエットを安全に効果的に行うためには非常に効果的です。

フードは、その猫の年齢にあわせた低脂肪・高繊維質の銘柄にし、決めた分量を1日数回に分けて与えます。

一度に食べる量を制限し、分けて食べさせることでエネルギーの消費が大きくなりダイエットがしやすい身体になるからです。

ダイエットは1週間で体重の1~1.5%程度減らしていくのが理想とされています。

 

  • エサを切り替える際の注意

いきなりすべてのエサを変えないで、最初は今までのエサに1割程度新しいフードを混ぜ、2日ほど便の調子などをみて、より好みせず食べるようであれば3日目以降に新しいフードを30%まで増やします。

その後も2日間程度様子を見て、問題がみられなければ60%まで増やすというように、最低でも1週間程度かけて、様子を見ながら切り替えます。

  • 食事の与え方にも一工夫を

肥満になりやすい猫はもともと食いしん坊さんが多いので、出された食事を一気に食べることで、よけいに太ってしまいます。

猫が一気食いできないような工夫をして食事を与えましょう。

例えば、猫の前足だけが入る入り口の狭い入れ物にフードを入れ、少しずつ掻き出させるようにする。

350mlのペットボトルにフードが出る程度の小さな穴を数カ所あけ、その中にフードを入れて、ペットボトルを転がして少しずつこぼれ出る分しか食べられないようにする。

このようなエサの与え方は猫の狩りの本能を刺激しますので、喜んで食べてくれるでしょう。

また、一粒ずつ投げて猫に探させて食べさせてもよいでしょう。

  • 運動によるダイエット

関節に負担がみられない、高齢でない、循環器系に異常がない猫であれば、今まで以上に猫が身体を動かしたくなる遊びに誘ってあげてください。

キャットツリーの一番上で猫じゃらしを振って誘惑し、下に誘うとか、階段があればゴムボールなどを上から転がすと猫は喜んで下まで駆け下りるでしょう。

しかし、猫は長時間動き回るのが得意ではないので、運動は1回15分程度にし、1日2~3回全身運動をさせると効果が上がるでしょう。

 

猫の危険なダイエット

 

非常に太った猫を急激にダイエットさせようと食事の量を極端に減らしたり、与えなかったりすると、猫の身体は血糖値を維持するために血液中のインシュリン値が下がってきます。

インシュリン値が下がると、皮下や内臓の周囲の脂肪分解が促進され、肝臓内の中性脂肪の量が蓄積され肝臓機能が損なわれてしまいます。

肝臓の細胞の中に脂肪が蓄積した状態を脂肪肝といい、ひどくなると脂肪肝症候群となり、激しい肝機能不全を起こします。

これは猫の命に関わる病気です。

太った猫が急に3日間食べないでいると、脂肪肝になるといわれていますので、急激なダイエットは絶対に避けるべきです。

どんなに太っているように見えても、成長期の猫に食事制限はタブーです。

成長期にもかかわらず肥満かな?と思われるのであれば、運動でダイエットを試みてください。

ダイエットを行って健康を害しては元も子もありません。

猫のダイエットを行う時には、必ず獣医師にご相談してください。