「あの子が私に暴言を吐くなんて……」小学校高学年くらいになると、ときに親が驚くような悪態をつくことがあります。その場ではショックのあまり、怒ることすらできず、悲しい気持ちを引きずってしまうことも少なくありません。親に暴言を吐く場合の考えられる要因とその対策について考えていきます。
暴言とは、子供が親に向かって吐く「死ね!」「クソババア!」のような暴言。
「なぜこんな言葉を言うようになってしまったのか」とその理由を考えるとき、親はまず自らを振り返ることが多いものです。
もし自分が子供に悪態をついているのならば、反省のしようがありますが、実際には親は全くそんな言葉を使ってないのに、ある日突然、「ウザい!」「消えて!」と言われたりすると、親はどうしていいのか戸惑い、対処に苦しんでしまうことになります。
「クソババア」と言う言葉は確実に後学したもので、暴言は100%学習によるものなのです。そして、そこには2段階の学習があります。
まず1つめは、見聞きしたことで、言葉として認知する段階。
「クソババア」という言葉の存在を初めて知るプロセスです。
親としては、「それはどこから、だれから?」ということが気になりますが、親からでなければ、周囲の人たち、友達との会話の中で知り得た。あるいはテレビやまんが本などの媒体です。
それらメディアを通して、言葉の存在を知ることはよくあります。
「クソババア」という言葉が頭に入る、これが1つめの学習です。
2つめの学習は
その言葉を発したことで、なんらかのメリットが得られれば、「これは使える言葉だ」となり、それは繰り返されやすくなります。
小学校3、4年生ともなれば、きっと大半の子が、「クソババア」という言葉を知っているでしょう。
でも多くの子はそれを頭の隅に入れたままで、 「マンガやテレビ、ゲームの中に出てくる言葉で現実性の薄い」程度の位置づけで自らは使わない言葉のストックとしてインプットされています。
つまり、語彙としての学習だけで、
普通は実際には使われることはなく、その子がその言葉を用いることで何らかの恩恵を得ると、興味を持つ言葉になるということです。
暴言で子供を優位に立たせてしまうことが負の連鎖になります。
「そんな汚い言葉や人がイヤがる言葉を言って、いったい何の恩恵があるのか……」と思う方も多いと思いますが
暴言を吐いたことで、相手が言うことを聞いてくれたり、脅したことで、欲しいと思っていたものが手に入った。
クラスで汚い言葉を言ったら、仲間が笑ってくれた!ウケた!!
これは、いずれも自分を優位に立たせた効果があったのが分かります。
それにより「これは効く」と学習され、繰り返されやすくなるのです。
このような学習は、自分で確立させていくだけでなく、周りのやりとりを見て学ぶことでも起こりえます。
周りの子が暴言を吐いたことで得をしていたりする状況を目撃すると、「ならば自分もやってみようかな」と思うようになる子もいるということです。
暴言、罵言、など 言ってほしくない言葉は、その子にとっての恩恵に結びつかないようにするのが対策になります。
暴言を吐いても、相手が言うことを聞いてくれなかった。
脅したのに、欲しいと思っていたものが手に入らなかった。
クラスで汚い言葉を言ったけど、だれもリアクションしてくれなかった。
無視された。
この状況だと、続ける意味合いが薄くなるので、モチベーションが下がります。
今の状況と照らし合わせ、お子さんがなんらかの恩恵をもらっているケースに当てはまるかもという場合は、それに乗せられないようにすることが一番です。
「クソババア」と言われてしまうと、カチンときて言い改めさせようとしたり、子供に負けぬ言葉で対抗したくなりますが、
残念ながら、思春期間近の子が素直にクソババア発言を撤回するとは考えにくいものです。
ママが同じ土俵に上がってしまうと親子げんかになるのは必至です。
ショックのあまりその場で泣いてしまったりすると、お子さんによっては「ママより優位に立てた」と感じ、クソババアという言葉の威力を再認識させてしまう結果になります。
怒りも、悲嘆も、感情的に大きいリアクションはいい結果を生まないので、できる限り落ち着きましょう。
いったんは聞こえないふりをするのも1つの方法です。
それは、暴言が心の訴えであるかも知れないからです。
たとえ暴言という形であっても、それが子供からの何らかの訴えであることもあるからです。
完全無視、100%スルーを続けてしまうことで、親へのサインを見逃してしまうとことにもなりかねません。
たとえば、学校でイヤなことがあったけれど、家でだれかに打ち明けられる雰囲気ではない。
そのため自分ひとりで悶々と考えていた……。
そんなときに母親からなにか小言を言われ、心にあった不平、不満が一気に爆発し「クソババア」と思わず言ってしまった、こんなことも起こりえるでしょう。
不意打ちではありますが、「何か様子が変だ」と気づくサインにはなります。
「うちの子がそんなことを言うなんて……」と思うような良い子タイプのお子さんの場合はとくに注意が必要です。
親に期待を持ってもらっている分、それに応えようと、良い子でいようという思いが働き、心に”ため込み“をしてしまいがちだからです。
もしそんな子が、ある日突然、「クソババア」と言ったら、それは「限界まで溜め込んでしまった」という警告でもあるのです。
そんなときは、子供を叱りつけるのではなく、まずは、親自身の過干渉や過度な期待など、子供を追い込む要因がなかったか振り返る必要があります。
「暴言」という形でも吐き出せれば良い、という見方もありますが、
日頃から我が子に期待をかけ過ぎている気がする方は、その子が感じている圧迫感を減らすことが暴言対策としての意味を持ってくるでしょう。